正解のない家づくりと向き合うということ
更新日:コラム
― 迷いの先に、住まいの輪郭が立ち上がる ―
家づくりの打合せを重ねていくと、
必ず訪れる瞬間があります。それは、「迷い」です。
間取り、素材、窓の位置、仕上げの色。
どれも一つひとつは小さな選択のようでいて、
実はそのすべてが、これからの暮らしを形づくる大切な決断です。
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決断は、不安と一緒にやってくる
多くの方が、「これで本当に良いのだろうか」と悩まれます。
それは、とても自然なことだと思います。
なぜなら家づくりは、
“正解が用意された選択肢”の中から選ぶ行為ではなく、
自分たちの価値観を、ひとつずつ形にしていく作業だからです。
迷うということは、
真剣に考えている証拠であり、
暮らしに対して誠実であろうとする姿勢そのものだと感じています。
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決めていくことで、家は輪郭を持ち始める
不思議なことに、
いくつかの決断を重ねていくと、
ある瞬間から家の“輪郭”が見えてきます。
「この家は、こんな空気感になりそうだ」
「この暮らしは、きっと落ち着く」
図面以上に、
言葉にならない確信のようなものが、
打合せの空気の中に生まれてくるのです。
建築は、決断の積み重ねによって、
少しずつ“その家らしさ”を帯びていきます。
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建築家の役割は、決断を急がせないこと
私たち建築家の仕事は、
答えを用意することではありません。
迷いの背景にある想いや価値観を整理し、
「何を大切にしたいのか」を一緒に見つけていくこと。
ときには立ち止まり、
ときには戻り、
必要であれば、決断を先送りする勇気も持つ。
その時間こそが、
完成した後に「この家で良かった」と思える確信につながります。
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家づくりは、覚悟を育てる時間でもある
最終的に家づくりは、
誰かに委ねきることでも、
完璧な答えを得ることでもありません。
「これでいこう」と決め、
その選択を引き受けること。
その小さな覚悟の積み重ねが、
住まいへの愛着となり、
暮らしへの自信へと変わっていきます。
家づくりとは、
建物をつくる時間であると同時に、
自分たちの暮らしを引き受けていく時間なのだと思います。
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株式会社ビルド・ワークス
代表取締役 河嶋 一志