SE構法で建てる重量木骨の家 そのメリット・デメリット 倒壊しないは本当か?

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SE構法で建てる重量木骨の家 そのメリット・デメリット 倒壊しないは本当か?

新しく家を建てる際の第一条件はなんといっても安全です。その安全性を確保したうえで、いかに使いやすく、見た目にもセンスの良さを感じさせる空間を構築するか。その両方を実現する家の建て方の一つに、SE構法があります。SE構法とはどのようなものなのか?そのメリット、デメリットについて、解説します。

■目次

 

 

SE構法とは、どういう建築方法か

SE構法のSEとは、Safety Engineering(Engineering For Safety)の略で、「工学的に安全な構法」という意味です。安全な住宅のための技術、ということ。ではどんな特徴があるのでしょうか。

 

構造計算と基礎計算に裏打ちされた耐震性

SE構法の大きな特徴に構造計算があります。

聞きなれない言葉かと思いますが、構造計算は、ビルやマンションなどの鉄骨や鉄筋コンクリートの設計では法律で義務付けられています。しかし、戸建てなどの木造建築では義務化されていないのでほとんど実施されていません。

SE構法では、戸建て建築においてもマンションなどを建てるときと同じ手法できちんと構造計算を行います。また、建物だけでなく、地盤強度も含めた基礎の構造計算もおこないます。

専門の構造設計士が様々な角度から計算し、梁の大きさや接合部の強さ、壁の配置などを決めます。そのため、SE構法で建てる家は、地震はもちろん、大きな台風がきても壊れない設計が可能になるのです。

 

高い強度を持った構造用集成材で建てる

SE構法に使用される建材にはJAS規格を満たした構造用集成材が使われています。
「構造用集成材」とは十分乾燥させ強度ごとに分類した木材を、精密に計算しながら張り合わせた特殊な木材です。

自然のままの木材では、乾燥の度合いなどにより強度がばらばらでわかりにくいものがほとんどです。しかし構造計算するためには材料の強度を把握する必要があります。
強度や性能が明確である建材、JAS規格により品質が担保された構造用集成材を利用することで、部材や接合部の強度が明確であることによって、厳密な構造計算が可能になるのです。

さらに構造用集成材は経年変化による反りや割れが発生しにくく、長期的に丈夫な家となります。

 

耐力壁の数を抑えて、自由度の高い外観や間取りに

SE構法は、フレームが強い構造(ラーメン構造)のため、壁がない開放的な空間でも耐震性の高さを保証できるのが大きな特徴です。

例えば「30畳のリビング」「3台の駐車スペースがあるビルドインガレージ」「9mの開口スパン」などなど、自由度の高い設計デザインが可能です。

さらに横だけでなく、天井を高くして上にも広がりのある空間作りも可能で、中庭を作ったり、吹き抜けにしたり、屋上を活用したりなども安全に設計できます。

住まいだけに限らず、店舗や事務所と併用される建物でも、その設計の自由度が威力を発揮します。

 

 

揺れない、倒壊しないという噂は本当か?

一般的には吹き抜けは耐震性が低くなります。地震や自然災害の際に壁や柱のない大空間はおしゃれでとても魅力的ですが、本当に安全なのでしょうか?

 

東日本大震災で構造被害ゼロの実績

SE構法が生まれた大きなきっかけの一つが1995年に起きた阪神淡路大震災です。震災では多数の木造建築住宅が倒壊してしまいました。

その当時の状況を改めて検証し、「大地震でも絶対に壊れない木造住宅を日本中へ広めたい」という思いからSE構法は開発されたのです。その後、中越地震や、東日本大震災、熊本地震といった大地震が幾度となく日本を襲いました。

しかしSE構法で建てられた住宅はどの地震でも倒壊したものはありませんでした。倒壊だけでなく、全壊、半壊の被害も受けていません。これは高い技術力による耐震性が実証されたとも言えるでしょう。

 

熊本地震シミュレーション結果

大地震による揺れが発生したとき、家のなかでもっとも壊れやすいのは柱と基礎などの連結部分です。建物が大きく揺れると、この部分に力がかかって柱ごと引き抜かれて倒壊してしまいます。

2016年4月に発生した熊本地震では、耐震等級2の木造住宅でも倒壊したと報じられました。後の検証で、壁の枚数を数える壁量計算(現在の木造住宅の一般的な検証手法)と、構造計算で大きな違いがあることがわかりました。

国土交通省で公開されている地震解析ソフトで、熊本地震のシミュレーションを行った、株式会社エヌ・シー・エヌ 動画「熊本地震シミュレーション(壁量計算と構造計算の比較)」では、同じ耐震等級2のSE構法は無傷で耐えているのがよくわかります。

 

 

SE構法のデメリットとは?

知れば知るほど、これ以上ないほど良い建築方法に思えるSE構法ですが、デメリットはないのでしょうか。

残念ながら全くないとは言えません。気になる点を確認してみましょう。

 

途中での設計変更が難しい?

SE構法はスケルトン・インフィル(建物を支える構造躯体と間取りや内装設備を分離した建築手法)がメリットです。リフォーム時に間取りの変更などが容易にできる強みがあります。

その強みは最初に、スケルトン(建物を支える構造躯体)を、地盤強度や耐力壁バランスなど、綿密な構造計算をした上で設計することで実現できます。

そのため、この構造に係る部分の変更をしようとすると、再び構造計算が必要になり、コストも期間もかかってしまいます。

建築士に、どこまでは変更可能で、どこから構造計算が必要な変更になってしまうのか、確認したうえで計画を練る必要があります。

 

建築コスト 坪単価は高い?

SE構法は一般の木造建築と比べるとコストはやや高くなります。
躯体工事の費用が通常と比べ1坪につき2~3万円ほど高くなります。30坪程度の住宅ですと60~90万円ほどの増額です。
他にも立地条件や地盤強度による基礎工事費の増加や、強度、機能が明確な構造集成材の材料費などもかかります。

ただし、これまで述べたように、耐震性能が上がることで安全な家になり、また長期間丈夫な家になること、地震保険料が割安になることを考慮すると、総じて割高とも言えないように思います。

 

構造用集成材によるシックハウスが心配?

構造用集成材を多数利用するSE構法にはシックハウス問題を心配される方もおられると思います。構造用集成材は木材を張り合わせて作られるため、ものによってはホルムアルデヒドなど化学物質の発散がある接着剤を使用しているものもあります。

しかしSE構法の構造用集成材は、自然素材と同等レベルの安全と言われる「Fフォースター」と呼ばれるホルムアルデヒド等級の、JAS規格で最上位の材料が使用されています。

さらに、24時間自動換気システムの設置が義務付けられているので、まず心配の必要はないかと思います。

 

新しい技術だから、実績数が少ない?

SE構法は1995年以降に開発され、まだ20年程度の歴史しかありません。そのため、実績数が少ないのでは?という不安の声も聞かれます。

ですが、例えばSE構法に使用される集成材の歴史は120年以上あり、現在も100年以上経過した集成材建築物は多数あります。また建築棟数も25,000棟の実績があり、中越、東日本、熊本の各大地震にも構造的な被害は出ていません。

SE構法は歴史に裏打ちされた素材を使い、震災のたびに見直されてきたより良い技術を使ってできた建築構法です。日本の風土にあった、高い技術力を結集した構法とも言えるでしょう。

 

 

SE構法で建てる重量木骨の家とは?

いざSE構法を選択し、住宅を建てようとしたとき、実はどこの工務店・住宅会社でも依頼できるものではありません。全国の「SE構法登録施工店」資格を持つ会社に依頼する必要があります。 この資格を持っている工務店・住宅会社を探しましょう。

さらにその中でも、より厳選された工務店、住宅会社に「重量木骨プレミアムパートナー工務店」の認証が与えられています。

重量木骨の家とは、重量木骨プレミアムパートナーが耐震構法SE構法を利用して建築する資産価値の高い家の総称

地域の気候や環境を熟知した地域密着の工務店や工務店が、周囲の景観に溶け込む、過ごしやすい家を建築。さらに第三者機関による現場検査や完成保証、長期優良住宅認定等も受け、性能・品質・保証を併せ持つ家です。

私たちビルド・ワークスも、この「重量木骨プレミアムパートナー工務店」の認定を受けています。

 

SE構法建築 注文住宅 施工例

こちらはSE構法で建築した重量木骨の家の施工例です。

平屋建てで外見はシックな和風のお宅ですが、家の中に中庭を設計。リビングから直接中庭に出ることができ、晴れた日は燦々と陽の光が降り注ぎます。柱や仕切りで視界を遮られないリビングは開放感があり、リラックスできる空間です。
その他の施工例はこちらもご覧ください。
参照:ビルド・ワークス「施工事例・実績」

 

新築に限らずリフォームも、平屋でも、三階建てでも

SE構法はリフォームにも利用できます。SE構法のフレームを使い、新しく梁と柱をつなぐことで壁や柱が少なく耐震性のあるリフォームが可能です。

また壁や柱が少なくて済むということは間取りを変えることも可能ということ。愛着のある家を大きく変えずにリビングを明るく開放的にする、目的に合った専用スペースを作るなど、仕切りを増やしたり減らしたり、間取りを柔軟に変えることができます。ライフスタイルや家族の人数に合わせて長期的に住むことが可能になります。

また上記の例のように平屋にして、中庭を作ったりビルドインガレージにしたり、大開口の家にすることも可能です。

逆に狭小地住宅でもメリットがあります。従来の構造では難しかった、耐震強度が十分な三階建てを建築することもできるのです。条件に合った自分の建てたい家を建てるにはぴったりの構法なのです。

 

 

これからの時代、家を建てるなら

これからの時代は安心安全な家づくりだけでなく、未来のために省エネな家づくりを推進していかなければなりません。SE構法で建てられた家は、高気密高断熱なエコ住宅でもあります。

最先端の木構造技術で、安心、安全、環境に優しく自由度の高い家を作ることができるSE構法。
家を建てる際に選択肢として検討していただければと思います。

ビルド・ワークスでは、SE構法を採用し、その利点を活かして100年後も街で自慢の住宅であるよう、住む人にとって長く、安心安全な住宅を建築しています。
参照:「ビルド・ワークスの標準」

家は一生ものの大きな買い物です。どなたにも後悔のないよう、満足の行く家を建てていただきたいと思います。京都、滋賀で住宅建築をお考えの方は、ぜひ一度御相談ください。

 

(記事内容 監修:一級建築士 河嶋 一志