余白のある暮らしを設計する

更新日:コラム

余白のある暮らしを設計する

― すべてを埋めないことで、生まれる豊かさ ―


家づくりの過程では、つい「どう使うか」「何を置くか」を中心に考えてしまいます。
しかし本当に心地よい空間とは、すべてが決められている場所ではなく、
何もない“余白”が残されている空間だと、私は思っています。

余白とは、使われないスペースのことではありません。
そこには、光や風、気配や時間がゆっくりと流れ込み、
人の暮らしをやわらかく包み込む“余韻”のようなものが宿ります。

余白は、暮らしを育てる器になる

たとえばリビングの片隅にある、何も置かれていない壁際。
そこに季節の花を一輪飾ったり、子どもが好きな場所として座ったり。
目的が決まっていない場所だからこそ、
そこに暮らしの「自由」が生まれていきます。

設計者として、私は常に“使い切らない設計”を意識しています。
機能を詰め込みすぎず、意図を押しつけず、
人がそこに住み始めてから、少しずつ自分のかたちに育てていけるように。
余白は、暮らしを育てるための器なのです。

静けさの中に、豊かさがある

現代の生活は、情報もモノも溢れています。
だからこそ、家という場所くらいは、
“何も起こらない時間”を大切にできる空間でありたい。

窓から差し込む光のかたちを眺めたり、
風の音を感じたり、
そんな小さな時間にこそ、人は心を取り戻します。

建築の仕事は、形を整えることではなく、
静けさや余白の中に“豊かさ”を残すこと。
それが、暮らしの本質に寄り添う設計だと思っています。

すべてを語らない設計へ

建築において、すべてを語り尽くすことは簡単です。
しかし、語らずに伝えること――
そこに建築家としての感性や信頼が宿ります。

“余白を設計する”というのは、
未来の住まい手に委ねるということ。
その家で過ごす日々が、時間とともに変化し、
やがて新しい風景を生み出していく。

私たちの仕事は、その最初の一筆をできる限り丁寧に描き出し、
未来へ繋ぐことです。

BUILD WORKs
 代表取締役 河嶋 一志