敷地を読むという仕事
更新日:コラム
― 家づくりは、土地を読み解くことから始まる ―
家づくりは、間取りを考えることから始まる。
そう思われがちですが、私たちの仕事はもっと前から始まっています。
それは、敷地に立つことです。
図面や資料では分からない、その場所の空気。
光の入り方、風の抜け方、音の気配、周囲との距離感。
敷地には、すでに多くの情報が詰まっています。
建築家の最初の仕事は、
それらを「読む」ことだと、私は考えています。
数字では測れないもの
敷地を読むという行為は、
法規や寸法を確認することだけではありません。
朝と夕方で変わる光の表情。
雨の日に感じる匂い。
近隣の生活音や、視線の流れ。
そうした数字に表れない要素こそが、
実際の暮らし心地を大きく左右します。
私たちは、
敷地に立ち、歩き、感じることで、
その場所が持つ性格を少しずつ掴んでいきます。
土地に、無理をさせない
家づくりでは、
「この土地に、この家を当てはめる」という発想になりがちです。
けれど私たちは、
その土地が無理をしない形を探すようにしています。
高低差、形状、周囲との関係。
条件が厳しい敷地ほど、
そこには必ず、活かすべき個性があります。
敷地の欠点を消すのではなく、
特性として受け入れ、設計に反映する。
その積み重ねが、
その場所にしかない住まいをつくります。
敷地が、設計の方向性を教えてくれる
不思議なことに、
敷地と向き合う時間を重ねていくと、
「この家は、こうあるべきだ」という方向性が、
自然と見えてくる瞬間があります。
それは、建築家のひらめきというよりも、
土地のほうが答えを教えてくれる感覚に近いものです。
設計とは、
ゼロから何かを生み出す作業ではなく、
すでにそこにあるものを、丁寧にすくい上げる仕事。
私はそう考えています。

暮らしは、土地とともに続いていく
家は、建てた瞬間だけ存在するものではありません。
その土地とともに、何十年もそこに在り続けます。
だからこそ、
敷地を読むことは、
未来の暮らしを読むことでもあります。
2026年も、
私たちは一つひとつの敷地に立ち、
その場所にとって無理のない、
静かに馴染む建築を考えていきたいと思います。
BUILD WORKs
代表取締役 河嶋 一志