同じ家を、つくらない理由
更新日:コラム
― 一棟ごとに設計するということ ―
家づくりを考え始めると、
「人気の間取り」
「定番のスタイル」
「よく採用されている仕様」
そうした言葉を目にすることがあります。
確かに、
多くの人に支持される形には理由があります。
合理性もあり、安心感もある。
けれど私たちは、
基本的に“同じ家”をつくることはありません。
それは、
特別なことをしたいからではなく、
一つとして同じ条件が存在しないと考えているからです。
土地が違えば、答えも変わる
これまでのコラムでも書いてきたように、
家づくりは、まず敷地を読むことから始まります。
光の入り方
風の抜け方
周囲との距離感
街との関係
土地の高低差や空気感
それらは、一つとして同じものがありません。
つまり、
土地が変われば、
本来導き出される建築も変わるはずなのです。

暮らしも、一家族ごとに違う
同じような家族構成でも、
暮らし方はまったく異なります。
家で静かに過ごしたい人。
人を招く時間を大切にしたい人。
光を感じながら暮らしたい人。
落ち着いた居場所を求める人。
その感覚は、
数値や条件だけでは整理できません。
だからこそ私たちは、
「どんな家が欲しいか」だけでなく、
どんな時間を過ごしたいのかを丁寧に伺うようにしています。
設計とは、“当てはめない”こと
効率だけを考えれば、
過去の成功例を繰り返すほうが合理的かもしれません。
けれど私たちは、
敷地や暮らしに対して、
既存の答えを当てはめるのではなく、
毎回ゼロから考えることを大切にしています。
この土地には、何がふさわしいのか。
このご家族にとって、何が自然なのか。
その問いを繰り返しながら、
少しずつ輪郭を探していく。
それが、
私たちの考える設計です。
似ていることと、同じであることは違う
長く設計を続けていると、
空間の考え方や素材の使い方に、
自然と“らしさ”は現れてきます。
けれどそれは、
同じものを繰り返しているわけではありません。
一棟ごとに敷地と向き合い、
暮らしと向き合い、
必要な形を探していった結果として、
思想がにじみ出ているだけなのだと思います。
私たちは、
“似せる”ための設計ではなく、
その場所と暮らしにしか生まれない建築を目指しています。
2026年も、一棟ずつ丁寧に
家づくりは、
大量につくるためのものではありません。
一つひとつ異なる条件の中で、
一つひとつ異なる暮らしを受け止めるものです。
だからこそ私たちは、
これからも一棟ずつ、
丁寧に考え、
丁寧につくっていきたいと思います。
同じ家を、つくらない。
それは、
住まい手と土地に対する、
私たちなりの敬意でもあるのです。
BUILD WORKs
代表取締役 河嶋 一志